2011年6月10日金曜日

財産


震災からほんの数日後、仕事が休みで家にいた日中に、一応いつでも避難できるように荷物をまとめておきなさいと母に言われて、全く気が乗らなかったけど形だけ荷作りを試みたことがあった。そのとき、かさばるけどやっぱり外せないなと思ったのが、クラリネットとウクレレ(のパイナップルさん)。あと、自分の曲の歌詞を書きとめたノートも。何気ない選択だったけど、後々考えるにつけ、自分の中で音楽を演奏することの比重がずいぶん大きくなっていたことを象徴するような出来事だった気がして、それから、ニュースなどで震災の被害に遭われた方のことを目にするとき、自分が楽器を失うことを考えただけでもかなりの痛手なのに…というのがおぼろげな目安となってた。

でもずっと、クラリネットを以前のように屋外で練習する気にはとてもなれなかった。以前だったら当たり前の日常が失われたことに対して非常にやるせなさを感じた。 気もちの整理が全くつかなかった。

4月の後半に、一週間にサポートのライブが3つ重なったときがあった。アニュウリズムさんのお手伝いで鈴木伸明さんと3人編成でのライブ、素敵メンバーでのあだくろ@七針、そして豪華バッハーンによるキスミワコちゃんの中くらいのレコ発。正直、どのライブも練習不足で迎えた本番だったけど、たのしんで演奏できた。現実の重みに押し潰されそうでふらふらだった自分の意思とは無関係に、生命力が勝手にはねて回ってたような感じというか…あのとき(それなりに)ちゃんと演奏できたことで、自分をもうちょっと信頼してもいいのかなと思えた。誘ってくれたアニュウさん、あだちさん、キスミー、どうもありがとう。もちろん、一緒に演奏してくれた方々、お会いした方々にも感謝です。

あだくろの七針ライブで、対バンだったEttさんと一緒に演奏されていた西尾賢さんという方の演奏がとにかく素晴らしかった。勘どころを押さえたセンスある演奏にすっかり魅了されてしまって、ライブ終了後、酔いの勢いも手伝って思わず話しかけに行ったら、西尾さんは逆にわたしがクラリネット吹いてたことについて聞いてくれて、学生の頃吹奏楽やってたけど長いこと演奏してなくて数年前からライブの手伝いを始めました、みたいなことを言ったら、「それは財産だね」、と。 

とても大切な言葉をもらった気がしてます。

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